大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)2306号・昭31年(う)2305号 判決

被告人 金孝中 外一名

〔抄 録〕

弁護人控訴趣意第二点及びF弁護人の朴被告人の為の控訴趣意第一点について。

按ずるに累犯にかかる前科の事実は、刑事訴訟法第三三五条第一項の罪となるべき事実には該当しないけれども、右事実の有無は法定刑の加重を左右し被告人にとつて重大な利害関係があるから、この事実を認定するには証拠によることは勿論、その証拠は公判廷で適法な証拠調を終つたものに限るものと解するを相当とする(東京高裁昭和二五年七月二九日判決高裁判例集第三巻二号三四八頁参照)。今本件について見るに、被告人朴に関して原判決は「被告人は昭和二十五年四月六日盛岡地方裁判所花巻支部において窃盗、外国人登録令違反により懲役一年に処せられ、該判決は確定し、その頃刑の執行を終つたのである。右の事実は被告人の当公廷における同旨の供述と前科取調書によつてこれを認める」と判示しているのであるが、昭和三一年四月一六日の口頭弁論調書中の被告人朴の供述には「前科は昭和二三年四月浜松簡易で窃盗罪により懲役一年に処せられ仙台刑務所に服役し六ケ月の保釈をもらつて出所したのです」とあつて前記認定の前科とは全然異なるのみならず、前科取調書の点につき精査するも、昭和三一年三月二四日公判調書によれば、証拠調別紙証拠カード記載の通りとあり、その証拠カードの記載を見ると、被告人朴昌淳の前科取調書、相手方同意、取調済と記載されているのであるが、その前科取調書を見ると、川崎区検察庁より照会を発したのが、昭和三一年四月一七日で、花巻区検察庁で照会により記載したのが、同月一九日、川崎区検がこれを受取つたのが同月二三日となつて居るのであつて、すなわちこれによれば、右前科取調書の作成されたのは、同年四月一九日であつて、前記三月二四日の公判当時には、右前科取調書は存在しなかつたことが極めて明白であり、従つてこれにつき適式な証拠調はなかつたものと断ぜざるを得ないのである。然るに原判決は前記の如く右前科取調書を以つて被告人朴の前科の事実を認定しているのであるから、結局適法な証拠調を経ない証拠によつて前科の事実を認定した違法があるものと謂うべく、該違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、此の点各論旨はその理由があり、被告人朴に関する原判決は到底破棄を免れない。

(工藤 草間 渡辺好)

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